違法な行政指導に泣き寝入りする時代は終わった
役所はしばしば、勝手な裁量で行政指導を行います。「泣く子と地頭には勝てない」とあきらめていた時代は終わりました。法治社会を生きる経営者が、役所の不正と闘うための原理をお話しします。
行政手続法を知っていますか
裁判で行政と闘うためには、まずチェックしておかなければならない法律があります。
その第一は行政手続法です。この法律は、官僚の勝手な裁量を止めるために作られた、経営者が闘うための武器になる法律です。経営者であればぜひ読んでマスターするべき法律だと思います。
それから市場主義の絶対条件である公正競争を担保する法律である独占禁止法、下請法、不正競争防止法も、経営者は徹底的にマスターするべきでしょう。
それから応用編としては国家賠償について、行政事件訴訟法を勉強しておくとよいと思います。
そのうえで、自分の事業に関する業法と、その施行規則の原文を読む必要があります。私の場合であれば、道路運送法や海上運送法に事業の原点があるわけです。しかし原文を読んでもわからないので、解説書を読む必要があります。解説書を読めば、ある程度のことが理解できるはずです。
そうした基礎的な知識の上で、自分がやっている事業の周囲にある法律を学んでいくとよいでしょう。具体的な事例を、「これは法的にはどのようなことなのだろうか」と考えることによって、だんだん法律的な考え方が身についてくると思います。
「役所は法律に従って仕事してる」なんて大ウソ
とにかく日本では法律を勉強していない人が多過ぎます。それは経営者だけではなく、弁護士も専門領域外にはとても暗いのが実際のところです。
また解説書だけを読んで安心していてはダメです。役人は法律を自分の裁量で運用したがるわけですが、解説書を書いているのは、そういう役人たちによって審議会や委員会に招かれるような人たちが書いているわけですから、役人の都合のいいように書いてあることが少なくありません。原文にきちんと当たる必要があります。
マスコミも、法改正やルール改正の時に、役人のブリーフィングを受けてそのまま記事を書いているだけです。メディアも当てにはなりません。
そうした法律の本を読んでいれば、いかに役所がやっている行政指導が違法であるかということは、いやというほどわかってきます。つまり「行政は法律に則った仕事をしているのだろう」と信じていては、大きな間違いなのです。
そしてもっと怖いのは、役所の違法な行政指導について、行政を訴えたとしても、裁判所は「行政が行った行政指導であるがゆえに正しい」とする判決を出すケースが非常に多いということです。
これまで日本では、なかなか行政訴訟には勝てませんでした。戦後、今よりももっとお上意識が強かった中で、左派系の弁護士の人たちが役所に対して果敢に訴訟を起こし、何度も負けてもなお立ち向かって行って、ちょっとずつ行政に対する勝訴の判例を積み上げてきたという歴史があります。司法の側もちょっとずつ世間の感覚に合わせてきているわけで、それで最近では、一般の人たちも行政訴訟で勝てるようになってきました。