一部勢力によるJAL資産の収奪を許すな
JALへの外国航空会社やファンドの出資がなくなったことにより、一見去ったかのように見えます。しかしJAL再建を主導する人物や、再建策のパターンは長銀など過去の事例とぴったり重なっているようです。こんなことで国民の財産であるJALを守ることができるのでしょうか。
JAL再建を主導するのは投資ファンド出身者
企業再生支援機構による3000億円の出資を中心にした日本航空の再建案が発表されました。
このホームページで以前から警告してきたように、国民の資産である日本航空が、長銀や日債銀のように外国企業の食い物にされてしまうのではないかという恐れは、外国航空会社やファンドの出資がなくなったことにより、一見去ったかのように見えます。しかし果たしてそれは本当なのでしょうか?
企業再生支援機構のCOOには、中村彰利氏なる人物が就任しています。この人はコロンビア大学MBA、日本とアメリカで弁護士資格を持ち、CITIBANKに勤めていたのですが、その後CITIBANKで上司だった新生銀行の八代政基氏に誘われてアメリカの投資ファンドであるリップルウッドに移籍しました。リップルウッドは日本長期信用銀行を買収して再生し巨額の利益を得たことはみなさんご存じの通りです。
中村氏はその後、産業再生機構の常務となり宮崎交通などの再建に携わりました。つまるところ中村氏は、私がこのホームページで指摘してきた、デューディリジェンス(資産査定)という魔法によって日本企業収奪した会社ファンドの経営者と、地方のオーナー企業の取りつぶしの両方にかかわってきた人物です。
なぜこの人が企業再生支援機構に入っているのかは私にはよくわかりませんが、彼は日本航空の再生を行う企業再生支援機構の実質的な最高執行責任者であるばかりでなく、新聞によると「日本航空が法的整理に移行した後は、日本航空に役員として送り込まれ、再建のかじ取り役となる可能性が大きい」とまで書かれています。つまり、外資の資産収奪方法をよく知っている人物が日本航空再建の主役となる立場になぜか立っているということなのです。
また、この再建劇の最中、「○○千億円の債務超過」「法的整理」「上場廃止」「株主責任による100%減資」などの情報がマスコミに流され、それが報道されることで、JALの事業資産や株主価値が大きく棄損しました。企業再生支援機構は公的機関であるため、こういう情報をマスコミに流した人間が企業再生支援機構の人間であった場合、守秘義務違反という違法行為を行っていることとなります。
また、前原タスクフォースの人たちも、企業再生支援機構もJALの再建に関与するために、当然、JALと守秘義務契約を締結しており、これもJALおよびこれらの関係者以外の人間しか知りえない情報がマスコミに載ること自体、この関係者は守秘義務に違反するという違法行為者であると考えざるを得ません。
デューディリを悪用した資産収奪パターン
私の聞き及んでいる範囲では、そもそも企業再生支援機構は地方の中堅中小企業の再生を支援するための公的ファンドであって、日本航空のような巨大企業の再生を支援するために作られたものではありませんし、そういうことになるとは企業再生支援機構の元々の経営者たちも聞いていなかったようです。それが、中堅中小企業の再生という本来の目的のために人材を採用して準備をしているところに、国土交通省の都合で日本航空再建を引き受けさせられることになってしまったわけで、企業再生支援機構の中にはこれに対応できる人材はいなかったのではないでしょうか。
ところが現在では、その日本航空再建をやるはめになるなどとは夢にも考えていなかった企業再生支援機構の作ったシナリオに基づいて日本航空再建の方策がマスコミに次々と発表されています。これは一体だれが作っているものなのでしょうか? コンサルティング会社出身の顧問が仕切っているという話も側聞します。
こうしたことをあわせて考えてみると、従来の前原チームで日本航空のデューディリジェンスをやっていた旧産業再生機構の人たちはわれわれの目の前の表舞台から消えているように見えますが、水面下ではその人たちにつながった人脈が関与していることに変わりはないことがわかります。したがってこのホームページで前々から警告しているような、外国資本や金融資本による恣意的なデューディリジェンスを悪用した日本企業の収奪パターンからJAL再建シナリオが外れたと安心してはなりません。むしろ収奪パターンそのままの再建策と考えられるのです。それによって、最終的に誰が利得を不正に得るシナリオになっているかは見えませんが。
企業再生支援機構は5年間の時限立法による会社ですから、最長で5年後(計画では3年以内)には日本航空に出資した3000億円の株は誰かに売られることになります。そのとき日本航空が再生してピカピカの会社になっているとするならば、その株がいったい誰にいくらで売られるのかが、日本航空の再建によってだれが得をするかということにつながってくるはずです。最後に得をする人間が一体だれになるのかは、今のところ全く不透明であるのか、あるいはそのシナリオが秘匿されているということを忘れてはなりません。