武器としての行政手続法
行政処分をちらつかせて行う行政指導は違法です。しかし役人はことさら無神経を装って、横暴に振る舞います。役人が行政手続法違反ということになれば、われわれは行政訴訟に勝てることになります。
役人が作る日本の法律がおかしくなっている理由
法律には、まず法律があって、その法律の解釈があります。そしてまた法律の運用があります。
行政手続法の目的は、総則にあるように「行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続」について、公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益を保護することです。
法律を運用するのは行政機関です。時代が変化してきたので、運用がやりにくくなった法律はたくさんあります。役所はそうした法律を、自分たちの裁量の部分を残すために、国会議員に働きかけたり、マスコミを煽って作っているのが今の法律だと考えてよいでしょう。
つまり「どう運用するか」を最初に想定して法律を作っているわけですから、法の原点から考えておかしなことになっているのです。
わかりやすくたとえると、カレーを作る法律があった時に、役所が民間が作っているカレーをグレードアップして、ビーフカレーを作らせるようにしたいと考えたとします。
しかし、最初から法律に「ビーフカレーを作らせたい」とは書けないので、「カレー料理を推進する法律を作りましょう」と国会議員やマスコミをだまして新しい法律を作り始めるわけです。ですから法律の中には「ビーフカレーを作りましょう」とは一切書かれていないのですが、施行規則には「ビーフカレーを作れ」と書かれていますし、さらに大臣名で出てくる通達にはビーフの大きさまで細かく規定されているという感じです。
この国の法律はすべてそうなっていると思って間違いないでしょう。
そこで私が業法を読んで、「どこにもビーフカレーなんて書いてないじゃないか! 私はチキンカレーが食べたいんだ!」と主張すると、その次に役所が持ち出してくるのが通達です。
役所は通達を盾にして「ビーフカレーを作らないと刑務所に入れるぞ」とか、「仕事ができないように命令を出すぞ」、「許認可をしないぞ」と脅かしてしてきます。
このときに役に立つのが行政手続法です。この法律はわれわれが行政と闘うときの唯一の武器なのです。われわれは裁判所で、業法と行政手続法を持って闘うわけです。
役人とケンカするときの争点は3つしかない
行政手続法には、「行政処分をちらつかせて行う行政指導は違法だ」と書いてあるのですが、しかしほとんどの役人は「わざと読んでいないんじゃないのか」と思えるくらい、行政手続法を読んでいません。もしくは知らんぷりを決め込んでいます。
(第34条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。)役人との話の折り合いがつかなくて裁判になったときに、争点になるのは行政手続法違反と業法違反、そして究極的には憲法違反の3つしかありません。